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闇夜の指令-番外編04-

 スクリーン上にパソコンの画面が立ち上がっている。そしてアメリカの大学生がやり始めたと言われる有名なSNSのページが開かれた。
 「今から変態が実名でやってるSNSに登録されてる友達3人に、変態の本当の姿をムービーで送りつけます!さて、どうなるかはお楽しみ!!」
 「○○さとし」
 この会場では今まで散々変態と呼ばれていたが、ふいに現れる自分の名前にぎょっとする。強制されて行う変態行為と日常生活の間には薄い膜が張ってあり、それらはお互いに侵食し合うことはなかったはずだ。その膜がぷつんと破れ、何か得体の知れない液体が溶け出してきたような、奇妙な感覚に襲われる。
 しかし何故自分のアカウントやパスワードが流出しているのか。誰がどういう経緯で手に入れたのか・・・。ふと後輩の顔が頭をよぎる。
 「では、まず一人目は・・・この方!」
 司会者の気紛れでランダムに選ばれたのは、学生の時のゼミの女友達だった。
 「この方には、全裸でストリーキングしている動画を送ります。大丈夫、白塗りしてるから多分ばれません。ははは。」
 大学の時にゼミの仲間の顔が脳裏に浮かぶ。こんなものを仲間に送られたらたちまち自分が変態だと噂され、誰からも相手にされなくなるだろう。自分が今まで築いてきたものが一瞬にして崩壊してしまう。思わず、
 「やめてくれー!」
と声を上げる。
 しかし心底挙げた叫びは受入られることはなく、逆にうるさいと一蹴されたばかりか、口にはパーティ開始前まで履いていた靴下が詰め込まれた。
 分娩台のようなものに全裸で拘束されながら、否応なく画面を見せられる。股を広げているので、画面上の笑顔の友人にアナルを広げているような羞恥の極みのような光景だ。思わず涙が溢れてくる。
 「はい、送信!」
 送信量を示すバロメーターはさっと100%を示し、すぐに表示が消えた。送信完了ということだ。無常にもあっけなく自分の人生が音を立てて崩れ落ちた。
 「いやいや、女性には刺激の強い映像でしたね!では、次はこの方!」
 無作為にある男の名前が選ばれた。趣味でやっているフットサルのサークルのメンバーだ。つい先日、忘年会で一緒になったばかりだった。
 「この男性には出来立てほやほやのちんちんルーレットの射精シーンを送ります!」
 「う!う!」
 声にならない声を上げる。必死で絞り出した呻き声は会場の笑い声にたちまちかき消された。送信前のプレビュー映像では、白塗りにしているとは言え、全裸で悶えながら多くの人前で惨めにも射精する自分の姿が映っている。
 「はい、送信!」
 またひとつ何かが崩れた。
 「人前で射精するとか、この変態はまじで頭おかしいですね!みんなに軽蔑してもらいましょう!では、最後はこの方!」

まさか・・・こんなことが!
 「見ての通り変態と同じ苗字の女性です。○○さん、偶然でしょうかね。この方には特別にネットでも話題になった屋外駐車場で全裸で勃起したままダブルピースしているムービーの高精細バージョンを送りします。チンポの先から我慢汁を垂らしているので、必見ですよ!」
 最後に選ばれたのは、妹だった。
 「う!う!う!」
 必死に身体を揺らし、叫んで何とか止めようとする。それだけは知られる訳にはいかない。全身を真っ赤にして必死の抵抗を試みたが、その最後はあっけなかった。蝋燭の炎がふっと消えるように。
 涙で視界が歪み、スクリーンで全裸でピースサインしている男の姿が揺らめいて見えた。全てのムービーが送信され、全身の拘束が解かれた。泣きながらステージ上に倒れ込んだ男を尻目に歓談の時間が戻った。自分が今まで必死で守ってきた人生など、単なるパーティの余興でしかなかったのだ。

闇夜の指令-番外編03-

 「さあ、みなさんお待ちかね!いよいよ本日のメインイベントです!」
 朦朧とする意識の向こうから司会者の声が響いてきた。
 ステージ上のスクリーンにプロジェクターの文字が浮かび上がる。
 「ちんちんルーレット」
とそこにはあった。
 「説明しましょう!これから各チームに分かれていただきます。それぞれのチームでこの変態のちんちんを順番にしごきます。もちろん、生で触るのは汚いので、しごく時には手袋を着用してください。しごく回数は1チーム10回までです。変態を射精させたチームの勝ちです。豪華景品と賞金10万円をご用意しています!また、変態にはできるだけ射精しないように我慢してもらいます。もし、射精してしまった場合、変態には恐ろしい罰ゲームが待っています。ではでは、ゲームの開始です!」
 
 ステージ上に複数のスタッフが現れ、自分の身体を捉える。どこから出てきたのか、分娩台のような特殊な椅子に身体を括り付けられる。一糸まとわぬ全裸で足を高く上げ股を広げた姿勢のまま、両手両足の自由が奪われた。
 「それではAチームの方!どうぞ!」
 軽妙な司会に乗せられて、嫌だ嫌だと言いながら、厚手の手袋をつけた女性グループが近づいてきた。早く射精させた方が勝ちならできるだけ刺激を与えた方が良い。想像以上の力で勃起したチンポを握ってきた。
 「うっ・・・!」
 思わず、声が漏れる。こんな強く握ったまま10回もしごかれるのか。我慢できる自信がない。
 「いーち、にー、さーん、よーーん・・・」
 丁寧に磨き上げるようにチンポをしごく。奥底に抑え込もうとした快楽の塊が前立腺の辺りで胎動するのがわかる。歯を食いしばり、我慢する。恐ろしい罰ゲームなど食らう訳にはいかないのだ。
 何とか、10回耐え抜いた。ふと見ると次のチームがすでに後ろに控えている。よく見れば、その次もさらに次も・・・。少し前にステージで自分をおもちゃにしたやんちゃグループがにやにやしながら立っているのも見えた。絶望的な気持ちだけが心を支配した。
 
 「はい、次はBチームです!変態をいかせましょう!」
その後も入れ代わり立ち代わり、手袋をつけた人間がチンポをしごいていく。やんちゃグループは高速でチンポをしごく作戦に出たが、意外にも失敗に終わった。耐性ができてきたのか、このまま耐え凌げるのではないか、という希望が出てきた時、司会者の絶望的な一言が自分を奈落の底に突き落とした。
 「では、最後のターンです。最後のターンは刺激を与えるのもありとします。チンポをしごく方以外は全身を触って変態をいかせてください。また、しごく回数を2倍の20回とします!必ず変態をいかせましょう!」
 この時点で自分の運命は決まっていたのかもしれない。
 撮影隊がチンポの真横まで迫る。自分の射精シーンを記録するつもりだろう。
 運悪くやんちゃグループのターンになった。ステージで乳首をいじられ勃起させられたのを思い出す。
 「うっ!うっ!」
 女性を愛撫するように丁寧に乳首をいじられ、他の手が全身を虫のように這いまわる。勃起したチンポは男の強い力でしっかり握られ、確実に射精へのカウントダウンを刻んでいく。
 「くっ!」
 歯を食いしばり快感に耐えたが、ついに16回目で射精した。粘性の白い固まりが宙に飛び出し、放物線を描いて腹に落下した。
 「マジで出しやがった!」
 「ムービームービー!」
 「何か臭くね?」
 「変態きもい。」
 会場はざわめき、どよめき、笑い声が空間を支配した。

 パーティの会場でただ一人全裸になり、勃起したチンポをおもちゃに、射精に至るまでをゲームにさせられる。しかもそれは記録され、また自分を脅すネタになるのだ。通常では考えられない状況に、頭の中は真っ白になり何も考えられなくなった。
「それでは、変態が射精したので、罰ゲームです。スクリーンをご覧ください。」

闇夜の指令-番外編02-

 「ただいま、変態が戻りましたーーー!!!」
パーティ会場の扉を開けると、司会者が大きな声で叫んだ。一瞬、ハッとしたように空気が止まって静けさが支配した後、割れんばかりの拍手と絶叫、苦笑、嘲笑が耳に届いた。
 「マジ変態!」
 「普通はできないよな。」
 「まだ勃起してるよ。」
 「いやーだー。」
人々の熱気が皮膚を溶かしてゆく。クリスマスパーティで集まった100人ほどの着飾った人達の中、ただ一人全裸の自分がいる。全身、白く塗られ股間にはトナカイの絵をペイントされ、極寒の街の中を走ってきたのだ。

 「では、変態クイズ『変態は無事に戻ってくる。○か×か。』○の方正解―――!!!正解の方には素敵なプレゼントがありまーーす!ステージの方へどうぞ!」
 以前、友人の結婚式の2次会で来たことのある洒落たこの店も、今では地獄のステージだ。後輩に参加を強要され、余興として全裸でボディーペンティングされ、挙句の果てには街中を走らされてきたのだ。いつも通り強力な強精剤を飲まされ、無理やり勃起させられているのも毎度のことだ。パーティの冒頭では男女交えて100人近い参加者に、自分のことを露出狂の変態で素人ながら芸人を目指していると紹介されていた。殆どの人間は自分のことを極度の変態だと思い込んで、軽蔑していることだろう。

 「先輩、よく頑張りましたね。でも、まだこれからですよ。」
いつの間にか背後に来ていた後輩が耳元で囁く。瞬間、トナカイの赤い鼻として赤く塗りつぶされた亀頭がぴくんと上向いた。
 忘れもしない10月のハロウィン。渋谷のど真ん中に全裸で放り出され、スクランブル交差点を目指した自分はあっさりと警察に逮捕された。当たり前だろう、全裸で性器を勃起させた男が街を闊歩しているのだから。幸いにも初犯ということですぐに釈放され、後輩が身元引受人としてやってきた。
 「先輩、ラッキーでしたね。会社には内緒にしてあげますよ。その代わり、ずっと僕のおもちゃになってもらいますから。」
後輩の顔を見た時、涙が溢れてきた。
 後輩は会社では何事もなかったように接してきたが、その後プライベートでは何度か呼び出された。ホテルで身体を弄ばれるだけでなく、スイートルームのような一室で後輩の友人達の前で羞恥芸を強制的にやらされたりしたこともあった。年下の男の前での羞恥芸はプライドをぽきっとへし折られるような屈辱を感じたし、同時に女の前ではかっと顔が熱くなり、焦燥にも似た激烈な恥ずかしさを覚えた。

 「それでは正解のみなさん、おめでとうございましたー!しばらく歓談の時間です。ステージでは変態が踊り続けますので、暇な方は相手してやってください。撮影もOKなんで、どんどん撮ってネットにアップしてくださいねー!」
 司会者の声が聞こえてきた。急いでステージへ向かう。白塗り全裸の自分がトナカイの股間を揺らしながら、クリスマスソングに合わせて踊る。ダンスなどやったことはないので、我流に手や腰を動かす。楽しく談笑する着飾った人々。ただ一人自分だけが全裸以上に惨めな格好で恥を晒し続ける。
 「はい、ピースして!」
4、5人の男女のグループに声をかけれ、両手でピースを作る。
 「こんなのアップしたら凍結されんじゃね?。」
 「捨てアカ作って拡散させたら?」
 「それな。」
 会話が胸に突き刺さる。顔を白塗りにしているから恐らく個人は特定できないだろうが、この醜態もすぐにネットに挙げられて、世界中に拡散されてゆくのだろう。あの駐輪場での全裸オナニーのように。

 「一緒に写真撮ろうぜーー!」
少しやんちゃな雰囲気の男5人組に取り囲まれた。
 「あれ?チンポ元気ないじゃん?」
一人の男がふざけて背後から両腕を伸ばして女の胸を揉むように、自分の胸をいじってきた。ぞくっとするような快感を首の後ろに感じ、すぐに乳首が固さを帯る。
 「乳首感じてんじゃね?」
男達の嘲笑とともに、一度は治まりかけた勃起が再び始まった。
 ステージ上、真っ白なスポットライトに照らされ勃起させたままおもちゃにされ、画像やムービーを撮られ、世界中に晒され、笑われる。悪夢としか思えない。しかし、頭がくらくらして眩暈で倒れそうになりながらも、何故か勃起は勢いを増していくのだった。

闇夜の指令-番外編01-

 身を切るような寒さに耐えきれず、帽子やコートで体をガードしなければいけない季節になった。少しでも体を温めようと足早に街を歩く。至るところが赤や緑で飾り付けられ、クリスマスソングがどこからともなく聞こえてくる。行き交うカップルの口から白い吐息が浮かれた街に放たれる。
 このクリスマスという時期だけは、一人で歩くと普段は意識しない劣等感のようなものが湧きあがってきて、早く部屋に戻りたくなる。部屋で温かいコーヒーでも飲みながら、動画サイトの確認でもしよう。

 ちょっと前に、偶然とんでもない神動画が撮れたことがあった。すぐに動画をアップしたら見たこともない勢いで視聴数が上がっていった。一応、広告もつけてアップしたから多少は広告料収入も期待できるかもしれない。未だに信じられない。駅前の駐輪場で男が全裸でオナニーしてるんだから。発射まではしなかったけど、我慢汁を垂らしながら、両手でピースしていた。そいつはすぐに走り去って逃げていったけど、相当の変態だと思う。
 あれからも大学に行くのに何度もあの周辺を歩いているが、そいつとはすれ違うことはなかった。年は恐らく中堅のサラリーマンくらいの年だと思うのだが、あいつは何だったのだろう。変なクスリでもやってたのだろうか。

 ふと、遠くから女性の悲鳴のような甲高い声が聞こえたような気がした。街の騒音の向こうにそれは警笛のように聞こえてきた。何か本能的に予感のようなものを感じて、咄嗟にスマホを手にした。この胸騒ぎには記憶がある。カメラを起動し、動画撮影モードに切り替える。だんだんと悲鳴が近づいてくる。間違いない。何かがやってくるのだ。
 それは白い人だった。昔、何かの映像で見た「暗黒舞踏」というパフォーマンスを思い出した。しかし、その白い人間は踊ったりするわけでもなく、ただまっすぐにこちらに向かって全力で走ってきた。決定的瞬間を収めようと、スマホを向ける。

 近づいてきてはっきりわかったのが、その人間が白いのは全身タイツなどを着ているわけではなく、全裸に何か白いものを塗っているのだということだった。ボディーペインティングみたいなものだろう。また、体つきから男であることがすぐにわかった。そして、男は単に全身を白く塗りつぶしているだけはないことも明らかになった。
 その男の股間に、トナカイの顔が描かれているのだ。男は間違いなく一糸まとわぬ全裸だ。亀頭は真っ赤に塗られ、トナカイの鼻となるよう丁寧に描かれていた。しかも男は見事なまでに勃起している。亀頭を赤く塗っているからトナカイとわかるが、遠目には天狗のようにも見えた。男が走っているので、赤い鼻が左右に激しく揺れているのだ。

 「うぅ・・・。」男が小さな呻き声を挙げながら、自分のすぐ脇をすり抜けて行く。スマホの画面に収まるように男を目で追う。何か文句を言われないだろうか、心臓がばくばくいっている。また神動画をアップできる。感謝の気持ちを込めて、その男の顔を目に焼き付けた。男はまた周囲にたくさんの悲鳴を作り出しながら、街の中に消えていった。

 急いで部屋に戻って動画を確認した。スマホでは画面が小さいのでパソコンに動画を移す。大画面で映像を見てみたいからだ。顔まで白塗りにしていたのでその時は確信は持てなかったが、ゆっくり動画を流して確信した。間違いなく、あの男だ。今年の秋に駐輪場で全裸でオナニーしてた変態だ。今度は全身白塗りでチンコにトナカイを描いてストリーキングするとは、やっぱり頭のおかしい奴なんだろう。しかもギンギンに勃起していた。チンコも相当の大きさだ。そう言えばあの時はしっかりあったチン毛が、今回の映像では確認できない。でも何となくあの男の雰囲気らしきものを感じるので、同一人物で間違いないだろう。トナカイを描くのに邪魔なので、チン毛は剃ったに違いない。やはり相当の変質者なんだろう。

 さて、映像をアップしよう。今度の視聴数はどれくらいいくだろう。最終的な確認の意味も込めて、あえて映像速度をスローにして流してみる。男の赤い鼻がゆっくりと左右に揺れている。滑稽としか言いようがない。あの変態も世界中に醜態を晒されて本望だろう。目に焼き付けた男の顔を改めてじっと見つめる。
 よく見ると頬のところにきらっと光るものが見えた。目の横から一筋に光るものが流れている。涙だ。男は泣いているのだ。
 嬉し泣きだろうか。しかし、男の顔は苦痛に歪んでいるようにも見えた。大の男が惨めなボディーペインティングを施され、勃起させながら全裸で街を走る。もしかしたら、男は誰かに強要されて走っているのではないか。もし、そうだとしたら・・・。
 一瞬、躊躇した。しかし、想像できる全てに目をつぶって送信ボタンをクリックした。

闇夜の指令(あとがき)

闇夜の指令、いかがでしたか?何となく書き出してみたら結構長く書けました。
後半はずっと勃起しながら書いてましたよ。(^^;)
一応今回で完結ですが、キャラが動き始めているので、また続編を書きます!
お楽しみに!
今回は特にDM等で応援してくれる方がたくさんいて、励みになりました。感謝しています。
ではまたお会いしましょう!

闇夜の指令05


「うぐ・・・むぐぅ。」
 とあるホテルの一室。男の呻き声が聞こえる。男は両手を後ろ手に縛られており、目にはアイマスクを装着されている。男の目には暗闇しか映っていないはずだ。男は全裸でベッドの横に跪いている。そして何かをしゃぶらされている。それはわずかな塩気があり、温かく固さのあるものだった。

「先輩、夢みたいですよ。憧れの先輩がこんな風に僕のチンポをしゃぶってくれるなんてね。嬉しいなあ。いやあ、がんばってネカマした甲斐がありましたよ。まんまと罠にはまってくれるなんてね。先輩相当溜まってたんですね、くくく。」

 聞き覚えるのある声が頭の上から聞こえてくる。今年入社したばかりの後輩の声だ。自分のデスクのすぐ後ろにいるやつだ。彼が就職活動でOB訪問してきた時から丁寧に接してきたつもりだ。何でこんな目に合わなければならないのか。

「初めて見た時から先輩をおもちゃにしようと思ってたんですよ。そのために大手を蹴ってこの会社に入ったようなもんです。しかし先輩の走りは良かったですよー。最高でした。先輩知ってますか?最近、監視カメラってネットで操作できるのが結構あるんですよ。管理者がパスワードとか設定してなくて、自由に操作できるんです。駐輪場の監視カメラも当然僕が乗っ取って録画させてもらいましたよ。見てみますか?」

 アイマスクをずらされ、突如暗闇から解放された。目の前のタブレットに自分の姿が映る。駅前の駐輪場でギャラリーに囲まれながら全裸でダブルピースしている姿だ。全て動画で撮られている。顔も鮮明にしっかり確認することができる。これでは何も言い逃れができない。嫌な汗が流れてくる。

「くくく。予想以上でしたね。この先走り!・・・先輩には我慢汁って言った方がわかりますかね。エロいですねー。どこからどう見ても変質者ですよ。会社の連中には見せられないなあ。でも先輩、すでにツイッターで先輩の動画が出回ってるんですよ!流したのはこのカメラに映ってるオタクっぽいやつですかねー。ちょっと距離があるんで顔がぼやけてますけど、ばれなきゃいいですね。」

 後輩のいきり立ったものを口に咥えさせられながら、自分が奈落の底へ転落してゆくような気がした。破滅の足音が聞こえる。そして、全裸マラソンが地獄の序章でしかないことを知った。

「先輩、これからも楽しませてくださいね!もうずっと僕のおもちゃですからね!そうそう、もうすぐハロウィンですよ。先輩にやってもらいたいコスプレがあるんですよー。今から楽しみだなー。」

 がんがんと耳鳴りが酷くなり、後輩の声が聞こえなくなってくる。眼前のタブレットの画面から勃起させたまま全裸で人ごみをすり抜けて走り去る男の姿が見えた。再び、暗闇が戻った。

 10月末日。自分は大き目のワンボックスカーの中にいた。着衣はない。靴下さえ履いていない完全な全裸だ。両手は後ろ手に親指を結束バンドで結ばれている。こんな小さな紐でしかないのに全く手を動かせない。完全に拘束された状態だ。
「先輩、ついに来ましたよー、ハロウィン。確か先輩ハロウィンデビューですよね?いきなり人気者になれますよ。じゃ、始めにこれで・・・。」
 股間にクリームが塗られた。缶には除毛クリームと書いてあるのが見える。
「先輩には「変態」のコスプレしてもらいますよ。わかりやすいように書いときましょ!」
 胸から腹にかけて、油性マジックででかでかと「変態」の文字が書かれた。
「これで誰が見ても変態ってわかるでしょ?あとは・・・。」
 後輩がリュックから丸い金属製の輪を取り出した。
「先輩、この前飲んだドリンク今日もちゃんと飲んで来ましたよね?あれ結構効くでしょ?先走りもいっぱい出たしね。で、このコックリングをつけて・・・。」
 後輩が金属製の輪に性器を通し始めた。輪の直径が小さくかなりのきつさを感じる。睾丸の部分と竿の部分がきゅっと前に押し出され、いつもより強調されているように見える。
「これで勃起させますよ。小さいリングなんで一度勃起したら簡単には戻んないですよ。」
 後輩の手が亀頭を刺激し始めた。このまま勃起してしまえば自分はどうなるのだろう。必死に勃起を我慢したが、やがて生理現象は起こり始めた。
「先輩、勃ってきましたねー。気分はどうですか?もうすぐ先輩の人生が終わるんですよ!全裸でパイパン、体にはでかでかと変態の二文字、勃起させ続けながら手で隠すこともできず、渋谷のど真ん中に置き去りですからねー、くくく。人生の最後を変態として楽しんでくださいよ。」
 これは何かの間違いではないだろうか。自分は悪夢でも見ているのではないか。想いとは裏腹に規則的な指の動きに勃起は固さを増した。

 しゃーっと大きな音を立ててワンボックスカーの扉が開いた。
「交通規制があるんでここで降りてもらいますよ。自力で交差点まで歩いて行ってくださいね。辿り着けたら・・・ですけど、くくく。」
 目の前にお祭り騒ぎで狂乱した渋谷の街が広がる。仮装した楽しそうな人の波。
「じゃあ行くよ!ハッピーハロウィン!」
 思い切り尻たぶを蹴られ、車から転げ落ちた。全裸の変態が渋谷の街に産み落とされた。死刑宣告のようにワンボックスカーの扉が閉まり、車が動き始める。人々の群れの中心で、台風の目のように全裸の男が立ち尽くす。完全に勃起した性器が天を指し、赤く膨れ上がった亀頭はその大きさを誇示し、切れ目からうっすらと粘液が見え隠れしている。
 一人の男がある意味で死んだ。そして、変態が誕生した。

闇夜の指令04

 多くの人の叫び声をかわしながら、駅前ロータリーの西側、自転車置き場に辿り着いた。見上げると「南口駅前駐輪場」の看板が見える。その陰に隠れるように監視カメラらしき丸い物が見えた。あいつの言った通りだ。

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駅前ロータリーまで来たら、南口駅前駐輪場まで来て。
頭上の看板の横に監視カメラがあるから探してみ。
んでカメラに向かってアヘ顔、両手でダブルピースを作って最低10秒写ってね。
そうそう、せっかくだからチンコはフル勃起させてね!
10秒未満だったり、半だちだったりしたら即「鬼拡散」だから注意して欲しい。
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 性器はびっくりするくらい小さく縮んでしまっている。まずは勃起させなければならない。しかもできるだけ早く。長く留まれば留まる程、僕にとって生き地獄の強度が増すだけなのだ。

「おいおいオナニーしてるぞ!」
「兄ちゃん元気いいな!」
 肉体労働者と思しき2人組のおやじに冷やかされながら、性器を擦りあげる。なかなか大きくならない。自転車の向こうのオタクっぽい学生がスマホを向けているのがわかる。早くしなければこのような画像も拡散されてしまう。下手したらムービーも撮られているかもしれない。全裸画像を消すためのチャレンジが新たな全裸画像を生んでしまうのでは洒落にならない。

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ちゃんと勃起するように1週間オナ禁だからね。
あと、マラソン2時間前に「マムシ&マカドリンク アルギニンプラス」を
服用するように。
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 野外で全裸になってたくさんの人の前で自慰行為を見せつける。自分はそんなことに興奮する変態でない。しかし1週間の禁欲と強精剤の服用は自分の身体に意外な変化をもたらした。急激に勃起し始めたのだ。顔中がかーっと熱くなる。おやじ2名とオタク学生の他にも買い物帰りのおばちゃんや高校生カップルなども唖然として立ち止まっている。早くしなければギャラリーが増えてしまう。何より逮捕されるような事態だけは困る。
 さらに強く性器を擦りあげた。竿の部分にずしりと芯が入り、ついに隆々と完全に勃起した。そして、監視カメラに向かって両手でピースをつくり、口を開けて呆けたような表情を作った。これで10秒間だ。
「何だよ、あいつピースしてるぞ!」
「変態だよ、変態。」
「110した方がいいんじゃね?」
 さらに増えたギャラリーの囁きが胸に突き刺さる。日常では10秒などほんの一瞬なのだが、このシチュエーションでの10秒は永遠のような長さに感じられた。
「あっ!っくう・・」
 予想外の事態に思わず声が漏れる。強くしごき過ぎたのか、それとも禁欲と強精剤のせいかわからないが、性器の先からカウパー液がたらーっと滴ってきたのだ。しかも相当な量だ。尿道口から溢れ出たそれは怪しく滴る蜜のようだった。
「出てる!出てる!」
「おい、あいつ出すんじゃないか?」
 ギャラリーが再びどよめいた。

 それは異様な光景だった。日常の中の非日常。誰もが行きかう駅前の片隅の駐輪場で、何の前触れもなく全裸男のオナニーショーが開催されているのだ。男は呆けた表情で虚空に向けて両手でピースサインを作り、勃起した性器の先端から液体を滴らせている。優しい悪夢を見ているような、信じがたい光景だ。

 頭の中で10秒のカウントが過ぎた。もう大丈夫だろう。
「すいません!」
 すでにやや遠巻きにできた人だかりを抜けて、小道を目指す。再び暗闇に戻るのだ。来る時には縮んでいた性器も、今では完全に勃起している。走るたびに上下左右に揺れるそれは、設置型のサンドバックが叩いても蹴っても必ず垂直に戻ろうとする様を連想させた。また見方によっては何か棒状の生き物が股間に寄生しているようにも見えた。その生き物は先端を蜜で濡らして光らせており、蛍の発光のように求愛しているようにも見えた。

 帰り道は本当に人通りの少ない道でほっとした。徐々に勃起も治まってきた。遠くに公園の木々が見えてきた。ようやくこの地獄も終わるのだ。公園を指示されたルートで戻り、スタート地点の男子トイレに辿り着いた。幸い誰にも見られていない。一番奥の個室に飛び込む。そして急いで上の棚に手を伸ばし、紙袋を開けた。

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おつかれちゃん。
衣装チェンジしといた。がんばっておうちに帰ってね。
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 そこには競泳パンツが一枚入っていた。これで帰れというのか・・・。再び絶望の淵に突き落とされた。暗闇に季節外れの海水パンツ一枚を身にまとった男が駆け出して行った。

闇夜の指令03

 通りに出た。人通りの少ない小道とは言え、やはり通りを走るのは訳が違う。公園と違って暗闇が少ない。常に灯りに照らされて全裸の男が走っているのだ。呼吸が荒くなる。口の中が乾くのがわかる。性器は心の奥の心細さを反映して、小さく縮こまってしまった。走るたびにぷるぷると揺れる。
 ふと、遠い昔のことを思い出した。中学生の時の修学旅行の夜。一番最後に風呂から出ると自分の服がない。タオルもない。その代わりに一枚、小さな紙切れが置かれていた。
「服はもらった。フルチンで部屋まで来たら返してあげよう。怪盗ルパン」
同じクラスの悪ガキのいたずらだ。心臓がどきんと音を立てた。周囲を見渡した。この小さな脱衣所にはチンコを隠せそうなものは何も見当たらない。とにかく何もないのだ。手で身体についた水を切り、思い切って脱衣所から飛び出した。遠くに女子の声が聞こえる。全身の血の気がさっと引いていき、頭の中がくらくらする。
 そう、あの時の感じだ。遠い昔の感覚が蘇ってくる。あの時は結局数名の女子とすれ違って、悲鳴を浴びつつ何とか部屋まで辿り着いたが、今回は子どものいたずらでは済まないのだ。

 幸いこの小道では誰もすれ違わなかったが、目の前に大きな光と喧騒が迫ってくる。駅前通りだ。行きたくない。でも行くしかない。一刻も早くあの画像を消してもらわなければならない。
 ついに駅前通りに飛び出した。ぱっと見ただけでも何十人もの人の姿が見える。仕事帰りのサラリーマン。ほろ酔いの学生。コンビニ袋を手にしたOL。塾から帰る女子高生。思わず反射的に性器を手で覆いそうになったが、あいつからのメールを思い出す。

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もちろん走ってる時に手でチンコ隠しちゃだめだよ。
立派なチンコしてるんだから見せつけなきゃね。
一瞬でも隠したら鬼拡散して有名人になってもらうからね。
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 バンジージャンプで飛び降りる時もこんな気持ちなのだろうか。さすがにここでは人々の視線から逃げることはできない。
「うぉーー!」
「えっ?」
「何だあれ?」
「うそ!」
「何?何?」
「ストリーキング!」
「撮れ!撮れ!」
「罰ゲームか?」
「がんばれー!」

 四方八方からの人々の声が嫌でも耳に入る。事情もよくわからずに、この全裸マラソンにエールを送ってくれるカップルもいる。チャリティ番組のマラソンのようなものと勘違いしているのかもしれない。
 実態は全く違う。この駅前通りは地獄へと続く道だ。多くの人々の喝采や嬌声を浴びながら、人間としての尊厳を一枚ずつ脱ぎ捨て、僕は堕ちるのだ。握りしめた手は汗でびっしょりだ。夜風が地肌に冷たく纏わりつく。首の後ろにぞくっとしたものを感じた。

 普段は何気なく歩いている街。マッサージ店のネオンやマンガ喫茶の看板、焼き鳥屋からの煙、古びたビルの壁、家路を急ぐ人の群れ。目に見える全てがぐらぐらと歪んで見える。たくさんの服を着た人の林の中を、全裸の男が走り抜ける。この文明社会に突如、原始人がタイムスリップして来たような、奇妙な光景だ。無様なに性器を揺らしながら、男は駅前の人の波に吸い込まれていく。

闇夜の指令02

こちらの思いを見透かしたかのようにメールが届いた。

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画像楽しんでもらえましたか?ケツ穴までおっぴろげちゃってすごいね。
もちろん、オナニー動画も持ってるよ。職場の人が見たらビックリしちゃうよね。
多分人生終わるよ。
取引しますか?
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 完全に失敗した。僕が若い女の子だと思っていた相手は誰なのか、全くわからない。男かもしれないし、やはり女なのかもしれない。自分は取引したい旨、メールした。画像データを完全に破棄すること。それにはいくらかかるのか。そしてしっかりと約束を守ること。
 やがて返事は来た。

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お金はいらないよ。
そのかわり罰ゲームにチャレンジして欲しいな。チミのがんばる姿が見たいの。
やりますか?
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 罰ゲーム・・・。一体何をさせるつもりなのだろうか。不安に怯えながら返信を待つ。やがて「全裸マラソン」というタイトルのメールが届いた。野外を全裸で走ることから始まる罰ゲームだ。そして決行の時間や走行ルートなどの詳細も送られてきた。マウスを持つ手が震える。こんなことが僕にできるのだろうか。

 カップルの横を通り過ぎた。全裸でいることがばれただろうか。心臓が早鐘を打つ。もう消えてしまいたいと思った。この公園は外灯は少ないのだが、一つ一つが明るい。先程のカップルがいたような暗闇を走るだけならまだしも、外灯の下はきつい。それでも僕は決められたルートを走らなければならない。外灯が近づいてきた。今までは特段何の意識もせずにそばを歩き去るだけの外灯だが、今は太陽のような明るさを感じる。明るいことに恐怖を感じるのは初めてだ。暗闇から真昼の明るさの中に全裸の男が飛び出していく。恐らく遠くからも見えてしまうことだろう。

 僕はどこまで行くのだろう。再び舞い戻った暗闇で、立て続けに仕事帰りのサラリーマンや数人の学生集団とすれ違った。
「あれ裸じゃね?」
「変態か?」
 遠くに声が聞こえた気がした。確かに変態にしか思われないだろう。いい年の男が全裸で性器を上下に激しく揺らしながら走っているのだ。

 やがて、公園の出口が見えてきた。再び外灯に裸体を照らされ、僕は弾かれるように道路に飛び出した。この人通りの少ない通りを抜け、駅前通りに出て僕はある課題をやらなければならないのだ。

闇夜の指令01

 夜の深い闇。昼間は秋晴れの続く十月だが、夜はめっきり涼しくなってきた。夜の闇は人を興奮させる。ベンチに腰かけた若いカップルが談笑している。ふと、カップルの前を白いものが横切った。
「えっ?今の裸?」
 女の声に連れの男が反応する前に、その白い何かはもう消えていた。

 僕は公園を走っている。一人でひたむきに走る。しかしストレス解消のジョギングや体力作りのために優雅に走っているわけではない。その証拠に靴とアンクルソックス以外のものは何も身につけていない。僕は全裸で走っているのだ。
もちろん、僕は露出狂ではないから全裸で外を走ったことなどあるわけがない。服を着ていない状態がこんなに心細いものだとは知らなかった。心臓が破裂しそうなのは、走っているせいなのか、この極限状態に異様な興奮を覚えているせいなのかわからない。アドレナリンが放出されているのか、手の先が凍っているかのように冷たい。
遠目にベンチに座ったカップルが見える。しかし逃げるわけにはいかない。とにかく全速力で走り抜けるしかない。僕の走るルートは決められているのだ。

 スタート地点は自然の杜公園南側の東屋近くにあるトイレだ。男子トイレの一番奥の個室で全裸になり、衣服を全て脱いで紙袋に入れ、上の棚のような部分に置いておく。そしてトイレから全裸で飛び出して、公園を一周するように走った後、公園を出て通りに出て・・・それ以降のことはあまり考えたくない。そんなことが本当にできるのだろうか。その前に気絶してしまうのではないだろうか。

 何故こんなことをする破目になっているのか。原因は一ヵ月前に遡る。
「カッコいい!腹筋見せて!」
 匿名のSNSで若い女の子に乗せられ、スマホで裸を自撮りして送った。やがて何度かやり取りしている中で、性器丸出しの顔出し画像や肛門を開いた写真なども送ってしまった。久々に若い子にちやほやされ浮ついていたのだ。そして、全裸で自慰し射精した動画を送ったところで、急に連絡は途絶えた。
 どうしたのだろう、凍結でもされてしまったのかと思っていた矢先、職場のメールアドレスに自分の全裸画像が送られてきたのだ。デスクトップPCに広がる肛門の写真を見た瞬間、血の気が引いた。慌てて画像を閉じたが、自分は取り返しのつかないことをしてしまったと悟った。背後の席の後輩には見られなかっただろうか。職場がばれているということは、いつこのメールが上司や同僚に送られても不思議はないのだ。目的は何だろう。金だろうか。いくら要求してくるのだろうか。

プロフィール

天使マン【羞恥小説】

Author:天使マン【羞恥小説】
忘年会やパーティでの裸踊り・チンポ芸など大好きな「天使マン」です。いじめられる男、羞恥系M男小説をたまに書いてます。
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X:@tensiman1919 

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