2021/02/10
闇夜の指令-番外編09-エピローグ
休日、昼下がりの新宿駅前。日本有数のメガ・ステーションの周辺にはたくさんの人が行き交っていた。久しぶりに雲一つない晴天で、道を歩く人の顔もどこかほっとしたような、穏やかな笑顔が多いように見えた。何もない平和な日本だ。「きえーーーーーーーーーーーーーーーいい!」
そこに突然男の奇声が響き渡る。ざしゅざしゅと音を立てて男が小走りに走って来る。男の姿は否応なく人目を引いた。その姿は着物姿の武士で頭にはちょんまげを結っていた。まるで江戸時代からタイムトリップしてきたかのようだった。外国人旅行者が興味深そうにスマホを向ける。しかし全身を移そうと目線を下に落として、すぐに異様な事態に気がついた。
その武士は上半身は着物姿なのだが、下半身には何も身に付けていなかったのである。当然性器はむき出しだ。フランクフルトのような大きな陰茎の根本に生えているはずの陰毛は、両サイドを生やすように真ん中だけ剃られており、ひらがなで「さとっしー♡」と書かれていた。
その武士のような男は刀のようなものを小脇に挟みながら駅前の通りをひた走る。駅前には何かのイベントで使ったのか小さなステージのようなものが残されており、武士はより目立つ場所を求めていたのかステージによじ登った。
「やいやい皆の衆!拙者フルチンザムライでござーーーる!本日は晴天なり!」
「異国の方も多いと存じますゆえ、日本の伝統芸をお見せいたすーーーーーーー!!」
フルチンザムライを名乗る者が叫び声をあげる。多くの人が何事が起こったのかと足を止め、スマホを向けた。
サムライは小脇に抱えていた刀を鞘から抜いて、高々と頭上に掲げて見せた。しかしサムライが掲げたものは刀ではなかった。観衆から驚きの声が上がる。桃色に輝いたそれは刀ではなく、勃起した男性器の形をしていた。
「拙者フルチンザムライ、おちんぽ飴が好物でござるーーーー!」
サムライは男性器の形をしたものを自らの口に頬張り始めた。白目を向きだらだらとよだれを垂らしながら、一心不乱にむしゃぶりつく。観客から悲鳴が沸き起こる。
しばらく飴を堪能したサムライは急に背中を観客に向けた。
「拙者、下の口でも味わうでござるぞ!」
サムライは観客に見せつけるようにがに股になり、その中心にある「下の口」に飴を押し付けた。ずぶずぶずぶ・・・ゆっくりとピンクの男性器がサムライの中に吸収されていく。
「いやーーーー!」
「おいおいおい!」
多くの女性の悲鳴と男性の叫びが駅前のステージに交錯する。
「うぉぉーーーーーん!」
サムライは動物のような鳴き声をあげながら飴を出し入れし始めた。自ら刀の柄の部分を持ち、ピンク色のそれを出したり入れたりを繰り返す。やがて少しづつ出し入れのスピードが速くなっていく。白昼の狂乱である。
今まで観客に尻を向けていたサムライが、出し入れを繰り返しながら、おもむろに振り返ると、その中央に勃起したチンポが鼓動を打ちながら天を仰いでいた。
「はうう、はぅう・・・」
恍惚の表情で勃起した性器を見せつけるサムライ。片手でチンポ飴を上下させ、もう片方の手で乳首をいじり始めた。
「拙者、男でありながら乳も感じるでござるーーー!」
手で乳首を転がしながら、チンポ飴を肛門に出し入れする。快楽に身を委ね、虚空を仰ぐ。身体をくねらせながら、やがて膝ががくがくと震え始めた。
「拙者フルチンザムライ、晴天に雪を降らせるでござるーーーーー!」
「いくでござるーーー、必見でござるぞーーーーー!」
勃起したチンポの先から盛大に精子をぶちまける。びゅるびゅると大量の精が宙を舞った。
フルチンザムライは刀を鞘に納めると、チンポの先から白い汁を垂らしながら、このハプニングをくまなく記録するスマホの大群に向けてピースサインを作っていた。ひゃあと悲鳴とも感嘆ともつかない声がどよめきとともに広がり、フルチンザムライの駅前ステージでの羞恥ショーは幕を閉じた。たくさんのスマホがこの奇妙な光景を記録し、早くも拡散と共有が始まろうとしていた。
「君―!待ちなさーーーい!」
制服姿の男達が下半身を露出したサムライの姿を捉える。慌ててステージから飛び降りると、まだ勃起の収まらないチンポを左右に揺らし駆け出すサムライ。その表情は熱に浮かされたようで、目は虚ろだった。口元をにやけさせながら駅前の通りを走り抜けてゆく。
彼はもうこっそり夜の闇に紛れて走る必要はない。チンポ芸人としてただ自分の思うがままに、身体の奥の獣欲の求めるままに動けばいいのだ。闇から解放された男は白昼の人込みの中を駆け抜けて行った。