2019/04/12
いぢめの記憶 -07-
誰もいないはずの校舎。誰もいないはずの廊下。僕は一人で足を踏み入れている。先生に見つかったらこっぴどく叱られるだろう。でも胸がどきどきしているのはそんなことのためではない。悪童グループから呼び出された僕に、そしてしゅうじに何が起ころうとしているのか、想像もつかないからだ。工事しているせいなのか、掃除をしていないせいなのか、校舎全体が少し埃っぽい気がした。そろりそろりと階段を登る。目指すのは3階の視聴覚室だ。廊下のはるか先にそこはあった。視聴覚室はのドアはカーテンで覆われているのか、中を窺い知ることはできなかった。何故か律儀にとんとんとドアをノックしてしまう。
くくく、と笑い声が聞こえた気がした。少しづつドアを開けてみる。部屋の真ん中に裸の少年が見える。しゅうじだ!
「ちんかわ体操―――、はじめっ!」
やけになったような絶叫が聞こえてきた。しゅうじは両手でガッツポーズを作りながら腰を振りながら回転し始めた。チンコが高速で上下に揺れる。早すぎて良く見えないが、亀頭部分が竿の部分と同じ色に見えるので、今日は皮を剥かされていないようだ。
「イチ、ニ、サン、シ!ゴ、ロク、シチ、ハチ!」
大きな声で数字を刻みながら、今後は両手で尻たぶを掴み、アナルを開いたり閉じたりしている。思春期の少年にとっては悪夢のような光景だ。
「イチ、ニ、サン、シ!ゴ、ロク、シチ、ハチ!」
今度は膝を曲げたがに股の姿勢で、チンコの先を両手で握って長く皮を引き伸ばし、右へ左へグラインドさせている。
「イチ、ニ、サン、シ!うう、ゴ、ロク、シチ、ハチ!」
今後は床に寝そべって片手で乳首をいじりながら、チンポをしごいている。こんなものは体操でも何でもない。ただしゅうじにひたすら恥をかかせたいだけなのだ。しゅうじの顔はすでに真っ赤で、精神的に限界を迎えているように見えた。
「しゅうじ!」
思わず僕は駆け出してしまった。そして全裸のしゅうじを抱きしめた。
「友情、美しいねーーー!」
ふと脇から学童グループが現れた。全員で6人。そのうちリーダー格と思われる奴がにやにやしながら僕に話しかけてくる。
「おな小だけあってちんかわと仲がいいんだな。もっと仲良くなってみるか?」
呼応してくすくすと悪童達が笑い出す。
「おまえにはちんかわの正体を教えてやるよ。」
「やめてーーー!それだけはやめてくれーーーーー!!」
急にしゅうじが暴れ出した。しゅうじの顔は本当に必死で、僕にだけはその「正体」とやらを知られたくないようだった。
「ちんかわは黙ってろ!」
悪童グループに敵うわけもなく、しゅうじはすぐに取り押さえられた。そしてどこから持ち出してきたのか、工事用のトラロープで両手と両足を縛られてしまった。
「これ、見てみな!」
唖然と佇む僕に、リーダー格がスマホの画面を見せる。そこには衝撃の写真が収められていた。スマホ画面に写るメタボ腹の裸のおやじ。その横に寄り添うのは同じく裸のしゅうじだった。リーダーがスマホの画面をスライドさせる。次の写真は全裸で絡み合うおやじとしゅうじの写真だった。身体がぶるぶると震えだす。
「くっ!」
両手両足を縛られて競りの鮪のように床に転がされていたしゅうじが、顔を背ける。そして、悔しそうに涙を流し始めた。
「こいつはこういう奴なんだよ。ひいたか?」
「まあ、もっとも俺らも紹介料はもらってるけどな。」
「紹介料の方が高いっておかしくね?」
「ははは、でもおやじ探すのも楽じゃなくね?」
「まあちんかわの場合は趣味でやってるんだもんな?」
しゅうじはずっと床に顔を突っ伏していた。僕は状況が良く飲み込めず、震え続けることしかできなかった。