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闇夜の指令-番外編02-

 「ただいま、変態が戻りましたーーー!!!」
パーティ会場の扉を開けると、司会者が大きな声で叫んだ。一瞬、ハッとしたように空気が止まって静けさが支配した後、割れんばかりの拍手と絶叫、苦笑、嘲笑が耳に届いた。
 「マジ変態!」
 「普通はできないよな。」
 「まだ勃起してるよ。」
 「いやーだー。」
人々の熱気が皮膚を溶かしてゆく。クリスマスパーティで集まった100人ほどの着飾った人達の中、ただ一人全裸の自分がいる。全身、白く塗られ股間にはトナカイの絵をペイントされ、極寒の街の中を走ってきたのだ。

 「では、変態クイズ『変態は無事に戻ってくる。○か×か。』○の方正解―――!!!正解の方には素敵なプレゼントがありまーーす!ステージの方へどうぞ!」
 以前、友人の結婚式の2次会で来たことのある洒落たこの店も、今では地獄のステージだ。後輩に参加を強要され、余興として全裸でボディーペンティングされ、挙句の果てには街中を走らされてきたのだ。いつも通り強力な強精剤を飲まされ、無理やり勃起させられているのも毎度のことだ。パーティの冒頭では男女交えて100人近い参加者に、自分のことを露出狂の変態で素人ながら芸人を目指していると紹介されていた。殆どの人間は自分のことを極度の変態だと思い込んで、軽蔑していることだろう。

 「先輩、よく頑張りましたね。でも、まだこれからですよ。」
いつの間にか背後に来ていた後輩が耳元で囁く。瞬間、トナカイの赤い鼻として赤く塗りつぶされた亀頭がぴくんと上向いた。
 忘れもしない10月のハロウィン。渋谷のど真ん中に全裸で放り出され、スクランブル交差点を目指した自分はあっさりと警察に逮捕された。当たり前だろう、全裸で性器を勃起させた男が街を闊歩しているのだから。幸いにも初犯ということですぐに釈放され、後輩が身元引受人としてやってきた。
 「先輩、ラッキーでしたね。会社には内緒にしてあげますよ。その代わり、ずっと僕のおもちゃになってもらいますから。」
後輩の顔を見た時、涙が溢れてきた。
 後輩は会社では何事もなかったように接してきたが、その後プライベートでは何度か呼び出された。ホテルで身体を弄ばれるだけでなく、スイートルームのような一室で後輩の友人達の前で羞恥芸を強制的にやらされたりしたこともあった。年下の男の前での羞恥芸はプライドをぽきっとへし折られるような屈辱を感じたし、同時に女の前ではかっと顔が熱くなり、焦燥にも似た激烈な恥ずかしさを覚えた。

 「それでは正解のみなさん、おめでとうございましたー!しばらく歓談の時間です。ステージでは変態が踊り続けますので、暇な方は相手してやってください。撮影もOKなんで、どんどん撮ってネットにアップしてくださいねー!」
 司会者の声が聞こえてきた。急いでステージへ向かう。白塗り全裸の自分がトナカイの股間を揺らしながら、クリスマスソングに合わせて踊る。ダンスなどやったことはないので、我流に手や腰を動かす。楽しく談笑する着飾った人々。ただ一人自分だけが全裸以上に惨めな格好で恥を晒し続ける。
 「はい、ピースして!」
4、5人の男女のグループに声をかけれ、両手でピースを作る。
 「こんなのアップしたら凍結されんじゃね?。」
 「捨てアカ作って拡散させたら?」
 「それな。」
 会話が胸に突き刺さる。顔を白塗りにしているから恐らく個人は特定できないだろうが、この醜態もすぐにネットに挙げられて、世界中に拡散されてゆくのだろう。あの駐輪場での全裸オナニーのように。

 「一緒に写真撮ろうぜーー!」
少しやんちゃな雰囲気の男5人組に取り囲まれた。
 「あれ?チンポ元気ないじゃん?」
一人の男がふざけて背後から両腕を伸ばして女の胸を揉むように、自分の胸をいじってきた。ぞくっとするような快感を首の後ろに感じ、すぐに乳首が固さを帯る。
 「乳首感じてんじゃね?」
男達の嘲笑とともに、一度は治まりかけた勃起が再び始まった。
 ステージ上、真っ白なスポットライトに照らされ勃起させたままおもちゃにされ、画像やムービーを撮られ、世界中に晒され、笑われる。悪夢としか思えない。しかし、頭がくらくらして眩暈で倒れそうになりながらも、何故か勃起は勢いを増していくのだった。

闇夜の指令-番外編01-

 身を切るような寒さに耐えきれず、帽子やコートで体をガードしなければいけない季節になった。少しでも体を温めようと足早に街を歩く。至るところが赤や緑で飾り付けられ、クリスマスソングがどこからともなく聞こえてくる。行き交うカップルの口から白い吐息が浮かれた街に放たれる。
 このクリスマスという時期だけは、一人で歩くと普段は意識しない劣等感のようなものが湧きあがってきて、早く部屋に戻りたくなる。部屋で温かいコーヒーでも飲みながら、動画サイトの確認でもしよう。

 ちょっと前に、偶然とんでもない神動画が撮れたことがあった。すぐに動画をアップしたら見たこともない勢いで視聴数が上がっていった。一応、広告もつけてアップしたから多少は広告料収入も期待できるかもしれない。未だに信じられない。駅前の駐輪場で男が全裸でオナニーしてるんだから。発射まではしなかったけど、我慢汁を垂らしながら、両手でピースしていた。そいつはすぐに走り去って逃げていったけど、相当の変態だと思う。
 あれからも大学に行くのに何度もあの周辺を歩いているが、そいつとはすれ違うことはなかった。年は恐らく中堅のサラリーマンくらいの年だと思うのだが、あいつは何だったのだろう。変なクスリでもやってたのだろうか。

 ふと、遠くから女性の悲鳴のような甲高い声が聞こえたような気がした。街の騒音の向こうにそれは警笛のように聞こえてきた。何か本能的に予感のようなものを感じて、咄嗟にスマホを手にした。この胸騒ぎには記憶がある。カメラを起動し、動画撮影モードに切り替える。だんだんと悲鳴が近づいてくる。間違いない。何かがやってくるのだ。
 それは白い人だった。昔、何かの映像で見た「暗黒舞踏」というパフォーマンスを思い出した。しかし、その白い人間は踊ったりするわけでもなく、ただまっすぐにこちらに向かって全力で走ってきた。決定的瞬間を収めようと、スマホを向ける。

 近づいてきてはっきりわかったのが、その人間が白いのは全身タイツなどを着ているわけではなく、全裸に何か白いものを塗っているのだということだった。ボディーペインティングみたいなものだろう。また、体つきから男であることがすぐにわかった。そして、男は単に全身を白く塗りつぶしているだけはないことも明らかになった。
 その男の股間に、トナカイの顔が描かれているのだ。男は間違いなく一糸まとわぬ全裸だ。亀頭は真っ赤に塗られ、トナカイの鼻となるよう丁寧に描かれていた。しかも男は見事なまでに勃起している。亀頭を赤く塗っているからトナカイとわかるが、遠目には天狗のようにも見えた。男が走っているので、赤い鼻が左右に激しく揺れているのだ。

 「うぅ・・・。」男が小さな呻き声を挙げながら、自分のすぐ脇をすり抜けて行く。スマホの画面に収まるように男を目で追う。何か文句を言われないだろうか、心臓がばくばくいっている。また神動画をアップできる。感謝の気持ちを込めて、その男の顔を目に焼き付けた。男はまた周囲にたくさんの悲鳴を作り出しながら、街の中に消えていった。

 急いで部屋に戻って動画を確認した。スマホでは画面が小さいのでパソコンに動画を移す。大画面で映像を見てみたいからだ。顔まで白塗りにしていたのでその時は確信は持てなかったが、ゆっくり動画を流して確信した。間違いなく、あの男だ。今年の秋に駐輪場で全裸でオナニーしてた変態だ。今度は全身白塗りでチンコにトナカイを描いてストリーキングするとは、やっぱり頭のおかしい奴なんだろう。しかもギンギンに勃起していた。チンコも相当の大きさだ。そう言えばあの時はしっかりあったチン毛が、今回の映像では確認できない。でも何となくあの男の雰囲気らしきものを感じるので、同一人物で間違いないだろう。トナカイを描くのに邪魔なので、チン毛は剃ったに違いない。やはり相当の変質者なんだろう。

 さて、映像をアップしよう。今度の視聴数はどれくらいいくだろう。最終的な確認の意味も込めて、あえて映像速度をスローにして流してみる。男の赤い鼻がゆっくりと左右に揺れている。滑稽としか言いようがない。あの変態も世界中に醜態を晒されて本望だろう。目に焼き付けた男の顔を改めてじっと見つめる。
 よく見ると頬のところにきらっと光るものが見えた。目の横から一筋に光るものが流れている。涙だ。男は泣いているのだ。
 嬉し泣きだろうか。しかし、男の顔は苦痛に歪んでいるようにも見えた。大の男が惨めなボディーペインティングを施され、勃起させながら全裸で街を走る。もしかしたら、男は誰かに強要されて走っているのではないか。もし、そうだとしたら・・・。
 一瞬、躊躇した。しかし、想像できる全てに目をつぶって送信ボタンをクリックした。

プロフィール

天使マン【羞恥小説】

Author:天使マン【羞恥小説】
忘年会やパーティでの裸踊り・チンポ芸など大好きな「天使マン」です。いじめられる男、羞恥系M男小説をたまに書いてます。
mail:tensiman19@gmail.com
X:@tensiman1919 

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